「イタリア」と聞いたときに、何を思い浮かべるでしょうか?
青い海? 美味しいイタリア料理? 美しい丘の続く風景?人それぞれ、いろいろあるでしょう。
今回は、今まで訪れたイタリアの中で、歴史・文化・食生活に驚き魅了された州の中で、ちょっと面白い体験をした「南チロル」地方、トレンティーノ=アルト・アディジェ自治州のお話をしましょう。
国籍はイタリア、ハートはオーストリア・ドイツ
この言葉は、あるリキュール醸造所の社長さんが何回も口にしていた言葉です。 身振り手振りはまさにイタリアーノそのもの。 大きな動きなのですが、説明を聞いていると厳格なドイツ人のような…不思議な違和感です。
でも、この言葉こそがこの州そのものであるという事を、町歩きをして改めて感じるのでした。
この州を語るには、ちょっとだけ歴史を紐解く必要があります。
まず、州の位置するところがキーポイントとなります。イタリアの北東部、古くは神聖ローマ帝国の支配下にあり、第一次世界大戦まではオーストリア=ハンガリー帝国の領土だったため、ドイツ語を母国語とするドイツ系(バイエルン系など)の住民が多く、これからご紹介する町ボルツァーノはイタリア語とドイツ語が公用語とされています。
それは食文化にも影響しており、トレンティーノ地方はイタリア・ベネト州の流れを汲みパスタ、ポレンタ、米、ウサギや鶏などの肉料理を多彩に茸類と合わせた山のイタリア料理の文化。 それに対しオーストリア、スイスに接しているアルトアディジェ地方はドイツ食文化の影響が強く、豚肉とキャベツの組み合わせの料理、パンは雑穀系やドイツパン、お菓子はオーストリアの影響を受けたアップルパイのストゥルーデルなど、地方料理を求める限りはパスタ料理に出会うことはまずありません。 小さな州に2つの国があるような錯覚さえ覚えます。
ボルツァーノはオーストリアの香りに満ちている(と思う)
建築物もあまりイタリアの香りがしません。
何も言われなければ、オーストリアと思うかもしれません(オーストリア、行ったことないので想像です)。
イタリアでは歩道にゴミが落ちているのが当たり前、犬の落とし物も当たり前なのですが、ゴミ一つなくどこに行ってもきれいに掃除されています。 何となく、落ち着かないくらいに町全体が整然と綺麗で…
町の通りの表記も、一番上はドイツ語、Barのアルコールメニューも一番がビールになります。
地下にビールの醸造所があるレストランもあります。地下で醸造されたクラフトビールが本当に美味しい!!
イタリアでこんなに美味しいビールが飲めるなんて!ちょっと感動ものです。
いかにも、南チロルという風情の衣装を着た方が飲み物やビールを運んでくれます。
地下にビール醸造所があるレストランでのランチ。
パンは全粒粉パンか雑穀系でちょっとぱさぱさしていて、独特な風味が。
ソーセージはドイツソーセージっぽくシンプルな味わい。 キャベツを発酵させて作るザワークラウトもたっぷりと。 そして、ポテトもたっぷりと(もっともローストポテトは肉系イタリア料理の付け合わせにもよく出ますが)。
本来は硬くなったパンを再利用して作るパンニョッキのカーネデルリとたっぷりとパプリカ粉を入れたスープで煮込んだグラーシュ。
パプリカ粉で煮込むのは、オーストリアとか東欧で作る料理に多いです。
グラーシュ単品で注文するとザワークラフトが付いていて、混ぜながら食べます。
ボルツァーノは、まさに「国籍はイタリア、ハートはオーストリア」な町でした。
(2014年秋に訪問)